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「識学」導入で「社長不在でも回る組織」へー都内の鉄骨工事会社・小室鉄建の挑戦

株式会社小室鉄建

社長

小室 健太氏

株式会社小室鉄建は、虎ノ門ヒルズや八重洲再開発など都心の大規模プロジェクトを支える鉄骨工事会社。1964年創立以来、従業員11人という少数精鋭の体制ながら、国土交通大臣認定「Mグレード」の工場として、高い技術力で高品質な鉄骨構造物を手がけています。

三代目・小室健太氏の社長就任を機に、中小企業特有の組織課題を打破すべく「識学」を導入。わずか2年で属人的な体制から「社長不在でも回る組織」へと変貌を遂げています。

都心の鉄骨工事を支える小規模精鋭企業の変革

虎ノ門ヒルズや八重洲再開発など都心の大規模プロジェクトで、その一角を支える鉄骨工事会社がある。東京都内に工場を構え、従業員11人という小規模ながら高品質の鉄骨構造物を手がける株式会社小室鉄建(本社・東京都日野市)だ。

創業から60有余年、三代にわたり技術力を磨いてきた同社は、3年前に若き三代目・小室健太氏(39)が社長に就任した。

就任早々、中小企業の典型的な課題を抱え組織化に取り組む必要性を痛感した小室氏は、組織の生産性を最大化するマネジメント理論である「識学」を導入、わずか2年で「社長が現場にいなくても回る組織」へと変貌を遂げた。

小規模精鋭で高品質、小回りの効く対応

小室鉄建は、鋼構造物の設計・製作・施工を一貫して行う鉄骨工事会社だ。大型鋼構造物を手掛ける大手鉄骨メーカー(ファブリケーター)の工場の多くが北関東などに立地しているのに対し、同社は最大の需要地である東京都内に工場(美山工場・東京都八王子市)を持つ。

工場立地の有利さと、少人数ながら高品質な製品を提供できる技術力が同社の強みだ。その強みを生かして虎ノ門ヒルズのエントランスのひさしや屋上設備架台、八重洲再開発での超高層複合ビルの天井下地やエレベーターシャフトなど、建物の〝主役ではないが欠かせない〟部分を数多く手掛けている。

「工場規模は小さいのですが、品質には絶対の自信があります。都内に工場があることで、急な対応や細かな調整にも強いのが当社の特徴です」と小室氏は語る。

創業は62年前。祖父が立ち上げ、父が二代目として事業を継承し、現在は三代目の小室氏がかじを取る。家族経営の歴史を持ちながら、都心の難易度の高い工事を支える〝技術の会社〟として業界で評価されている。

最近の売上高は3億4000万円、営業利益は約1000万円を上げている。

会社への危機感から、三代目を継ぐことを決意

小室氏が小室鉄建に入社したのは26歳と遅かった。「職人の汗臭くてネガティブなイメージがあり、家業に入るのは嫌だった」という小室氏は高校卒業後、服飾関係のデザイナーを目指して専門学校に通ったほか、好きな音楽演奏やカーレースなどに没頭していた。

しかし、20代半ばになるころから「就職するなら父の会社に」と思うようになる。入社して営業、工場、設計…と順々に仕事を担当してみると、納入した鉄骨が図面と違っていたり、設計変更が反映されていなかったりなどで現場や顧客からクレームを受けることもあったという。外から見ているだけでは分からなかった会社の問題点が見えてきた。

その後、次期社長として父の仕事を引き継いでいった小室氏は金融機関との取引から現場、営業、管理などまで全ての業務を担当する。しかし、それら各部門は小室氏の指示を待ってから動くというような状態で組織としての機動性に欠けていた。そのため業務に忙殺(ぼうさつ)される毎日で、「これが社長の仕事なのか。このままでいいのか」と危機感を募らせ、「自分が社長になれば有給休暇がきちんと取れるような、キチンとした会社組織にしよう」と決意する。

そこで八王子市内の企業後継者などを対象にした実践的な後継者育成プログラム「はちおうじ未来塾」に入り、会社の理念や組織のあり方を学んだ小室氏は、同塾卒業発表会で父が見守る中、「社長を(自分に)交代してほしい」と宣言。父からは「喜んで譲りたい」という言葉をもらった。

そして2023年7月、小室氏は36歳で社長に就任する。「役職にこだわってはいなかったんですが、社長になることで自分のマインドセットを変えたかった。組織を立て直すには、まず自分が変わる必要があると感じていました」

 識学との出会い─アドラー心理学との親和性

小室氏が「会社をちゃんとした組織にしたい」と組織改革を進める中で出会ったのが「識学」だった。

「愛読書だった『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』というアドラー心理学の考え方と、識学が非常に近いと感じました」と小室氏。

特に、識学の〝結果で管理していく〟という視点や、〝部下との適切な距離を保つことで人を尊重しながら組織を整える〟というところに「強く共感した」と話す。さらに、一般的なリーダーシップ論とは違う、識学の〝常識へのアンチテーゼ〟とも取れるところにも引かれたという。「家族経営の会社は、どうしても情に流されやすい。

そこに一石を投じる識学の考え方は、当社に必要だと思いました」

導入前の課題─属人化、責任の曖昧さ、判断の遅れ

識学導入前、小室鉄建は中小企業の典型的な課題を抱えていた。

それは、
①社長が全業務を管理するという属人化
②役割と責任の曖昧さ
③現場での判断の遅れ
④工場管理の定量化(数値化)ができない

―などだ。

「誰が何をどこまでやるのかが曖昧で、判断が止まることが多かった。工場の生産性も感覚でしか把握できていませんでした」。

建設業界では、工期や安全に関する判断の遅れがときに致命傷になることがある。「組織で動く会社にしたい」と強く思っていた小室氏にとって、識学導入にためらいはなかった。

識学導入─図面からポイント制へ、工場管理を数値化

小室氏は、担当コンサルタントから識学のプログラムを受講しながら社内の評価制度などを順次、取り入れていった。その中でもっとも難易度が高かったのは、工場管理の定量化(数値化)だったという。

「うちでつくっている鉄骨は全てが一品もの、オーダーメードなんです。工場のラインで同じものをつくり続けているわけではないので、定量化するのは無理だと思っていました」。

それでも「定量化する方法はないか」と考えた小室氏はポイント制を思い付く。「オールインワンのクラウド型ワークスぺースNotionのアプリを使って、図面から工場内の作業を溶接、仕上げ、塗装、検査、出荷などの各工程に分解し、各工程に即して工場長の〝期待時間〟を数値化しました。例えば、工場長がこの仕事は30分で終わると判断した仕事をクリアすれば0.5ポイントを与えるといった具合に…」。そして、4段階ある社員の評価グレードごとに獲得するポイント数を設定した。

「これにより、作業量・負荷・進捗が『見える化』され、誰がどれだけの成果を出しているかが明確になりました」。それと同時に、各工程の役割と責任の線引きが徹底され、作業工程での迅速な判断にもつながった。

ちなみに、Notionを使った同社の工場管理の手法は、全国の鉄骨製作会社が加盟する業界団体、(一社)全国鐵構工業協会を通じ業界に広めていこうと、同社が中心となって推進している。

導入後の変化─「社長不在でも回る組織」へ

識学導入から2年。小室鉄建には明確な変化が生まれた。工場管理が透明化されたことで責任の所在が明確になり、かつてのような発注した図面と違ったものを納入するといったミスも無くなった。

中間管理職の成長も促され、「自分で考えて動く」文化が生まれつつある。「社長がいなくても回る仕組み」をつくることに成功したのである。「今は、私が会社にいなくてもほぼ成り立つようになりました。そこで生じた時間を社長として方向性を示すことに集中できるようになったのは大きいです」

ただ、まだ課題は残ると小室氏は話す。「担うべき責任と実際の認識や行動が一致していない〝位置ずれ〟が一部にあり、ルールを守れない社員もいます。社員の適切な目標設定ができていないのは私の責任だと思っています」。小室氏はこうした課題を正面から受け止め、組織改善を続ける考えだ。

未来─躯体工事や特殊鉄骨の受注、そして…

小室氏は、識学を土台にして、今後の成長戦略を次のように描く。1つ目は大規模な建設工事を設計から施工、管理まで一括して受注するゼネコンへの提案型営業だ。

「鉄骨を納入するだけでなく、ビル全体を構造的に支える躯体(くたい)工事を請け負うところまでやっていきたい」。すでに新規受注に向けてアタックリストを作成、営業活動を始めている。

2つ目は、技術的なハードルが高い特殊鉄骨分野への進出がある。スタジアムなどで使用される特殊な鉄骨づくりに挑戦することで技術力の向上にもつながると、試作品を製作中だ。それら成長戦略を通して最終的に実現したいと考えているのが経営理念にかかげる「カッコよく生きる人」を創造する会社の実現だ。

「うちの会社で働いていれば主体的に行動し、社会に貢献する〝カッコいい人〟になれるという仕組みを作りたい」と小室氏。そのビジョン実現のためにも、今の約2倍の年商規模(6億円)をターゲットに会社の規模拡大を考えている。

「これまで受け継がれてきた技術は大切にしながらも、それにとらわれずに、ワクワクするようなことをやっていきたいですね」。
識学を通じて組織を整えた小室氏は、将来への確かな手ごたえを感じている。

会社名 株式会社小室鉄建
所在地 東京都八王子市美山町2161-23
代表者名 小室 健太氏
事業内容 各種鉄骨建築設計施工、総合建築業
企業サイト https://www.komuro-tekken.co.jp/

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