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経営者としてより大きな絵が描ける

シンク・ロジスティクス株式会社

代表取締役社長

一木 貴大

中古自動車の輸出におけるヤード運営事業やフォワーダー(利用運送事業者)事業を手がけている、シンク・ロジスティクス株式会社。画期的なビジネスモデルで創業直後から成長を始め、7年間で従業員数40名・売上高25億円の規模まで育て上げてきた。そのプロセスにおいては、事業拠点を分けるとともに拠点間に温度差が生じ、社内がギスギスするといった問題を抱える。その要因として、自分自身が営業や事業運営に熱中するあまり、マネジメントに至らなさがあることに気づく。そんな時にたまたま出合った識学によるマネジメントのフレームに、自社の問題点を解消できる可能性を感じて導入。組織固めを進め、現在は次なる飛躍を期するステージにある。そんな同社の経緯について、代表取締役社長の一木貴大氏に詳しく話を伺った。

ビジネスモデルがマッチし成長軌道に

一木様のご略歴や、シンク・ロジスティクス創業の経緯から
お教えいただけますか。

代表取締役社長 一木 貴大様(以下、一木様):私は福岡県の出身で、久留米工業高等専門学校を卒業後、内定取り消しを受けてしまい、小規模の自動車専門商社に入社しました。結果的には、それが良かったと思っています。その会社の1年目は営業成績が上がらなかったのですが、業界の問題点を感じて2年目に新規事業を思いつき、社長に提案しました。社長は快くチャレンジさせてくれ、3カ月目から売り上げが上がるようになったのです。そして1年で正式に事業化できました。その後順調に伸ばしたところ、社長がMBOを認めてくれ、私が最高責任者としてこの事業に徹する体制づくりに協力してくれました。

事業内容について、ご説明いただけますでしょうか。

一木様:お客様は、中古車の輸出を手がける商社様です。輸出される中古車を当社のヤード(保税地域)で適切に保管するとともに、輸出前検査や通関手続き、船積み手配といった必要な業務のすべてをワンストップで請負います。

中古車の輸出には、作業、陸送、輸出検査、車両修理、港湾、通関、船会社といった事業者の手配が必要で、従来は輸出事業者が一つ一つ行っていたことを当社がひとまとめにしたところが大きなポイントです。また、中古車輸出のフォワーダー(利用運送事業者)として、船舶や鉄道、トラックなどの輸送手段を組み合わせた「オーダーメイドロジスティクスサービス」もご提供しています。物流業は、運搬や保管といった機能を提供します。当社は、こうした諸機能をお客様にとってより合理的な状態で提供するロジスティクスにより、収益性の向上に資するところに付加価値があると自負しています。

私がこの事業を始めたのは、お客様の成長が自社の成長に直結するビジネスだからです。お客様が売買を成立させていただかないと、当社のビジネスにはなりません。ですから、お客様の商流に関わり、その効率性を上げることでお客様のビジネス強化を支援することが当社の成長戦略となるのです。

創業後の成長経過についてお教えください。

一木様:2013年7月に福岡で自分1人とアルバイト2名でスタートし、2年目に5名、3年目に9名、4年目に19名と社員が増え、現在は40名を擁するに到っています。

売上高は1年目に3億、2年目に13億と跳ね、現在の25億までほぼ順調に伸ばせています。伸ばせた要因としては、創業から2年で博多、大阪、名古屋、横浜、川崎という輸出港に事業拠点を展開できたこと。それぞれの港湾会社にノウハウを供与し、当社が営業を担うフランチャイズ的なモデルを確立できたことが大きいです。

そのプロセスで、3~4年目に社員が19名に増えた頃、本社を川崎に移転させ、福岡との2拠点体制としました。私は川崎を本拠地とし、海外にもよく出張するという日々でした。トップ営業をして事業をつくるプロセスが面白くて仕方なく、そちらにばかり目が行っていたのです。そんな私に間近で接している川崎本社のメンバーは、事業を伸ばしていこうというアグレッシブな人材が揃っていました。

離れた拠点間で温度差が生じ、社内がギスギスに

順調に成長を始めていく中で、組織上どんな問題が生じましたか。

一木様:川崎本社の雰囲気は良かったのですが、距離が離れた福岡拠点のメンバーにそのような熱はなく、本社との温度差がかなり開いて社内がギスギスしてしまったのです。ミッションやビジョンを明確に定めていなかったために、私がいないと拠点リーダーだけでは判断できない場面が増えてしまったことが大きな要因でした。

そこで、私が数カ月間福岡に滞在し、One on Oneを繰り返して何とか立て直そうとしたりしました。事業が伸びるとアドレナリンが出ますよね。それで温度差を誤魔化してメンバーを引っ張ろうとしていたと思います。しかし、5年目の頃はもう誤魔化せないと感じて、コミュニケーション能力のある人材を採用し、飲み会などのコミュニケーション量増やして一気に社内の融和を図るといった改善策を取りました。

当社のビジネスは、先述のとおり様々な事業者の協力があってこそ成立できるので、各事業者を担当する社内のメンバーのコミュニケーションが非常に重要だからです。しかし、それでは本質的な問題は改善されないと感じていました。

そうした中で、識学を知ったわけですね。

一木様:2019年のことです。売上は伸びていましたが、このままではこれ以上続かないと感じたのです。社員数は30名ぐらいに増えていて、2カ所の拠点に分かれ、それぞれがバラバラな方向に向かっている感じがあったからです。みんなで一生懸命一艘の船を漕いでいるけれども、方向が一つではないので、前に進んでいかないというような状況です。考えてみれば創業以来の我流経営で、経営やマネジメントに関するしっかりした知識が全く不足していると気付きました。すでに組織運営をしっかりやらなければならない規模になっていて、そのためにマネジメントについてきちんと学ぶ必要があると。

そんな時に、執行役として参加していた「日本サブスクリプションビジネス振興会」で、同じく執行役であった識学の梶山副社長と知り合いました。識学の名前は聞いたことがあったので、梶山さんにマネジメントの悩みを相談してみたのです。

どういったことを相談したのですか。

一木様:自分はトップ営業をして業績を伸ばし、事業をつくって成長している感覚が強くあるが、権限移譲がうまくできずメンバーとの実力差は開くばかりに感じている。なぜ付いてきてくれないのか、といったことです。

梶山さんは、「マネジメントでカバーしていく必要がある」とアドバイスしてくれました。梶山さんは朗らかでありながらキリっとしたコメントをされる方で、そんな人柄に引かれました。そして、識学について詳しく伺い、出会えた縁もあるので梶山さんにトレーニングをしてもらうことにしたのです。

ほかのコンサルティングやトレーニングは検討されましたか。

一木様:他には、モチベーション向上に関わるコンサルティングサービスを検討しました。しかし、当時の当社の内部においては、識学が言うところの「誤解」や「錯覚」が到るところにあって、会社とメンバー間、メンバー同士の間にズレが生じていた状態でした。そんな状態のままでメンバーのモチベーションを高めることなどできないだろうと感じたのです。まずはズレを解消するために、誤解や錯覚をなくすことが先決だと。そのためには、識学しかないと思いました。

また、梶山さんという要因も大きかったです。彼は元々経営者で、トップ営業をこなして事業をつくっていったという、私と近い経歴の持ち主だったからです。私が抱えていた悩みを話すと、「ありますよね、そういうの」と、自らが経験済みの道について話してもらえたのです。ですから、非常に高い期待感があり、2020年2月から5月にかけてのマスタートレーニング受講を決めました。

実際のトレーニングで、違和感やアンマッチ感はありませんでしたか。

一木様:ありました。識学は個々の役割を明確に定義します。つまり、縦割りを強く行うと受け止めたわけです。一方、先述のとおりロジスティクスに関わる業務は一人で完結できるものではなく、職種間の緊密な連携が必要です。当社では、30~40名の社員がひと固まりになってビジネスを行ってきたとの感覚がありました。それを縦に切り離すとハレーションを起こすのではないかと危惧したのです。野球で言えば、重なっていたサードとショートの守備範囲を離すことで、三遊間を抜かれる恐れを感じたといったところです。そこで、梶山さんと相談し、切っても問題なさそうなところを切り離し、後は状況を見ながら慎重に切れるところは切るという形で進めました。それが結果的にうまくいっていますね。

実利的な効用がありますね。

一木様:識学は、人間の意識構造を「位置」「結果」「変化」「恐怖」「目標」という5つの領域に分け、それぞれの領域で起こりがちな「誤解」や「錯覚」を把握して取り除くことにより、生産性を向上させる方法論であると認識しています。その5つの中で、「結果」の領域が特に効果的だったと感じています。

例えば、トップ営業で当たり前のように行っているノウハウを言語化してメンバーに伝えれば、できるようになるだろうと考えていましたが、いざやってみるとできないメンバーがほとんどでした。識学によって、その違いは結果を出すまでのプロセスの中間地点の設定が自分でできるかできないかの違いにあることがわかりました。そこで、識学のできる・できないを言語化するフレームワークにより、中間地点でできないポイントを明確にし適切な指示を行うことで、うまく運べるようになったのです。

このマネジメントノウハウは非常に効果的ですね。それと、私自身のマネジメントの変化です。識学を学ぶ前は誰であろうと社員とはコミュニケーションを取り、場合によっては直属の管理職を飛ばして私が指示をしていました。識学を学んでからは、自分のマネジメント対象である管理職と、自分が管理職を兼務しているメンバーとしか話していません。そうしないと、識学の「位置」における錯覚や誤解の原因になるからです。こうすることで、本来そのメンバーに関する判断は直属の上司が行うというルールが徹底され、生産性の向上に繋がっていると思います。今は社長、マネージャー、リーダー、メンバーの4階層で、ビジョン、ミッションを定め、週に数回私から全員にメッセージを発信しています。以前あった温度差やズレは、リーダーのレイヤーまでは解消していると思います。

識学後のメンバーの受け止め方はいかがでしょうか。
「社長が急に冷たくなった」といった反応はありませんでしたか。

一木様:以前は私に相談されることはその場で答えていましたが、識学を学んでからは直属のリーダーやマネージャーに相談するよう振り向けています。人懐っこいメンバーは、さみしく思っているでしょうね。そんなメンバーは可愛いので普通に接したくなりますが、我慢しています。当初、ハレーションを起こすかと心配もしましたが、問題が起きたら梶山さんに相談すればいいから、まずはやってみようと。導入から1年半経ちましたが、結果的にこれが明らかな原因で離職した社員は一人も発生していません。

それは素晴らしいですね。
識学を導入すると、考え方に合わない社員が離職するケースが一般的です。

一木様:繰り返しになりますが、当社は内部の意思疎通も重視しているので、ドライに組織を切り離したりせず、一体感も残しているせいではないかと思います。それと、社員がより成長を実感できるようになったからではないでしょうか。できなかったことに対して「なぜできないのか?」から「できることを見つけよう」というマネジメントに変わり、少しずつ難易度を上げてできる範囲を広げているからだと思います。 “監視”ではなく“育成”を意識したマネジメントの場面が増えてきましたね。

マネジメント力だけでなく、リーダーシップも身に着ける

今後の課題は、どういったことでしょうか。

一木様:今の私は、トップとして3年後までは明確な計画に落とし、10年先まではおぼろげな方向性が見えている状況です。私が接するマネージャーやリーダーは、比較的高い視座から先を見ることができていますが、メンバーは日々の業務に追われている現状があります。そこで、私の抽象度の高い話をメンバーに落として理解させてもらうために、もう1名の役員にも識学のマスタートレーニングを、マネージャーやリーダーにもリーダートレーニングを受講させています。

また、チーム間でマネジメントレベルに差があります。いいチームからは意見や課題がスッと上がって来ますが、そうでないチームは目詰まりしていて上がってこない印象があります。恐らく前者のチームはマネジメントが機能しており、後者は意見集約に手間取っているのでしょう。

一般的に和を重んじる日本は多数決で物事を決めたがりますが、多数決が必ずしも正しいわけではないと思います。遠くを見ている私の意見は、多数決では恐らくごく少数派でしょう。そこを理解、納得して付いてきてもらわなければなりません。その場合、リーダーシップやカリスマ性が必要だと思います。「正しいか正しくないかは置いておいて、この人に付いていけば間違いはないだろう」と思わせる力です。識学によるマネジメント力だけでなく、そういった人間的要素も身に着ける必要があると感じています。今後の修養テーマですね。

御社の今後のビジョンについてお教えください。

一木様:2023年3月期までに、中古車輸出領域のヤード運営事業でトップシェアを取りたいと思っています。現在のシェアは、トップ企業の半分弱ほどです。以前は非常に難しいと感じていましたが、来年18名、再来年は30名採用し、達成させる計画を描いています。その先については、日本では2030年から中古車輸出市場がEVに圧されて縮減していく見通しにあります。そうなる前に、運ぶモノの領域を多角化させていきます。この業界は参入障壁が高いこともあって、同業者の経営者は40代以上が中心です。DXによる効率化やビジネスモデルを変革し明るい未来をつくっていく必要があると思っていますが、変わり方が分からないという経営者が多いように感じます。そこで、若い自分がファーストペンギンになって業界を変えていかなければならないとの強い使命感を持っています。うまくいけば、追随するところが増えるでしょう。

最後に、同じようにマネジメントの悩みを持つ読者に
アドバイスをお願いします。

一木様:事業をゼロから立ち上げて軌道に乗せることは、アート性が強いと思います。一方、マネジメントはロジカルなサイエンスという感じがしています。サイエンスなので後天的に身に着けやすい分野と言えるのではないでしょうか?マネジメントを学んで身に着ければ、アート性を支え、もっと大きな絵を描くことができるように思っています。ビッグピクチャー実現させる手段がマネジメントではないでしょうか。

会社名 シンク・ロジスティクス株式会社
所在地 神奈川県川崎市川崎区砂子1-10-2 ソシオ砂子 4F
代表者名 代表取締役社長 一木 貴大
事業内容 自動車輸出YARD運営事業、海上輸出貨物利用運送事業
企業サイト https://www.sync-logi.com/ja/aboutus/