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危機的状況から利益が十数倍に 意識改革が奏功

株式会社三信工業

代表取締役社長

桑原 健

株式会社三信工業は、大分市で主に法人向けの設備工事業を運営している創業71年の老舗。しかしながら、ノンマネジメント状態が続き資金繰りに苦労する危機的状態に。先代から承継した現社長が識学を導入し、経営改革に着手。導入2年半で一人当たり売り上げ165%アップ、利益は12~13倍に。道半ばながら、着実に会社を変えている。

経営危機でも、遅刻をしても平気な雰囲気

御社には2022年2月に識学をご導入いただきました。
どういった課題がおありだったのでしょうか。

代表取締役社長 桑原 健様(以下、桑原様):当社は1953年に祖父の兄が創業し、父とプロパー入社から社長に就任した2名による経営が続いた後、2021年11月に私が5代目の社長に就任しました。

私は2014年に入社し、2019年から副社長を務めていました。そんな歴史がある会社ですから、私よりはるかに年長で勤続年数の長い社員が少なくなかったわけです。そんな社員らの多くは、朝出社した時も挨拶しなかったり、遅刻をしても平気な者が少なくありませんでした。管理職が咎めず、見て見ぬふりをしてきたからです。ですから、社内の空気感はどんよりとしたものでした。副社長の私がそんな社内が嫌で注意をしても、聞いてもらえない状況だったのです。

業績も落ち込んでいました。特にコロナ禍となった2020年から仕事が急減し、資金繰りがパンク寸前となりました。コロナの緊急融資で凌ぎましたが、とにかく社長は社員の給料だけは死守していたわけです。ところが、社員はそんな裏事情を知らず、給料が出るのは当たり前といった意識があったと思います。だから、遅刻をしても平気といった空気が改まることもなかったのだと思います。

社長を承継し、マネジメントの立て直しに着手された、と。

桑原様:最大の原因は、評価制度がないことだと考えていました。先代の社長は、一律的に昇給や昇格を行って社員を繋ぎとめていたわけです。ですから、「●●課長補佐」のような役職の社員がいたずらに増え、マネジメントも存在していませんでした。結果を残すかどうかに関係なく昇給していたので、これでは会社がもたないと危機意識を持ったのです。

そこで、何かいい仕組や制度はないか、探し始めました。自分にはマネジメントの経験も知識もなかったので、社長を承継することが決まった頃から関連する書籍を読み漁っていたのですが、そんな中に安藤社長の『リーダーの仮面』がありました。一読して、刺さったのです。そこで、識学のサイトやYouTubeチャンネルを見るなどして識学を試してみようと考え、導入を決めました。

“激変緩和措置”を設けず一気に変えた

導入後の経過についてお教えください。

桑原様:担当してくれたコンサルタントは、本に書かれていることを腹落ちさせてくれるように事例を交えて深く教えてくれました。識学の考え方は納得いくものとして、その年の暮れに管理職を集めて識学を導入することを話したのです。識学の概要と、評価制度を導入し降格・降給もあり得ることなどを説明しました。管理職たちからは、「社員が悲しむことだけはしないでほしい」といったことを言われました。

そして、翌2023年1月に、社長としての会社への思いや経営方針とともに、識学を導入する理由や施策の概要についてA4の紙1枚にしたためて全社員に配布しました。ここで大きく躓いた形です。

どんな状況だったのでしょうか。

桑原様:識学は、“諸刃の剣”のようなところがあると思っていますが、社員らは単に剣が自分に突き付けられたと感じたのではないでしょうか。それまで昇給昇格しかなかったところ、いきなり「今期から降給降格もある」と社長から宣言されたわけですから。変えるなら時間をかけず一気に踏み切ったほうがいいと考え、“激変緩和措置”も用意していませんでしたので。

そして、その後“姿勢のルール”とともに、役割定義と評価制度を作成し、全社員に説明する場をつくりました。すると、60代前後の社員が3名退職しました。識学の考え方が全く合わないという理由です。

そのうちの一人は総務部長で、経理財務も全部やってもらっていたので非常に困りました。仕方なく私が全部やって凌ぎましたが、退職者が出ることは織り込み済みではあったものの、退職された瞬間は困りましたね。

そこで一旦は落ち着いたのですが、その後ポツポツと退職していく動きがありました。識学を全社に導入する前は22名の社員がいたところ、2024年11月までの2年ほどで8名が退職する一方、3名を採用し、差し引き17名となっています。

その後の退職理由とはどういったものでしたか。

桑原様:「1年ほど我慢して従ってきたけれども、この先もずっと評価され続けるのはしんどい」といったものです。業績を上げても、また新たに業績目標が来る、と。

ある社員は「いつまで頑張ればいいのですか?」と私に言ってきましたが、プレッシャーに耐えられなかったのだろうと受け止めています。一方で、業績アップに応じた昇給を行っていたわけですが、それがモチベーションに繋がらない人もいたということですね。

給与はどれぐらいアップしたのでしょうか。

桑原様:コロナが明けてペースが上がったこともありますが、給与は平均月2万円アップし、2023年度の賞与は前年より1.5~2か月分アップしています。

「自分たちが頑張らないと給料は上がらない」と気づく

識学導入の効用はどのように出ていますか。

桑原様:まず、社員に対しては、業績を上げなければならないという焦りが生まれたことです。前の社長は温情的に給料を上げてくれていたけれども、それで会社が火の車となり、もうそういった温情に甘えることはできないと気付いた社員が行動を変えてくれました。自分たちが頑張らないと給料は上がらない、と。

また、“姿勢のルール”も大きくて、挨拶など守らなければならないことが明確になったことで、規律を守る姿勢が生まれました。とは言え、これも当初は反発する社員が多かったです。管理職も指摘することに慣れていないせいか、相変わらず見て見ぬふりが続いて私だけが指摘し続ける時期が続きました。もっとも、それまでは守るべきルールもなかったので無理もないとは思いますが。現在では指摘されたら受け入れて改めるという風土ができつつありますが、まだ完遂に至っておらず、改革途上ではあります。

そして、大きい成果は業績面に出ており、2024年の一人当たり売り上げ165%アップ、利益は12~13倍の見込みです。それまでが悪すぎたので、「正常値に戻った」という感覚でいますが。

今後の課題についてお教えください。

桑原様:“姿勢のルール”を徹底させるために、その運用を管理職らに一任することにしました。社長が決めたことには“やらされ感”があっても、自分たちで決めたルールなら守らせるだろうというねらいです。

そして、大事なのは識学をより徹底するための識学サーベイに基づく採用の拡大です。既に管理部門に一名、非常にスコアが高かった人材を採用していますが、役割定義の理解が速くこちらの要望事項にハイスピードで対応してくれています。こういう素晴らしい人材を次々に採用していきたいですね。

最後に、同様に組織マネジメントに悩む企業様に
アドバイスをお願いいたします。

桑原様:識学を導入する場合は、覚悟が要ると思います。そうでないと、社員から反発され、嫌われてめげてしまうでしょう。長期的な視点で辛抱強く取り組む必要があると思います。肝要なのは、識学はツールに過ぎないので、社長の経営方針を確たるものにした上で、そこに識学を嵌めるという考え方で利用すべきということです。そして同時に社長や社員の人間力を高める施策をしなければ、大きな成果に繋がらないのではと思っています。

会社名 株式会社三信工業
所在地 大分市新貝12番1号
代表者名 代表取締役社長 桑原 健
事業内容 管工事業・建築一式工事業、消防設備事業、土木工事業、とび土木工事業、水道施設工事業
企業サイト http://www.sanshin-net.co.jp/index.html